癌の食事療法を考える
10年前に叔母が卵巣がんでステージ4の宣告から奇跡的に生還・完治(手術+抗がん剤+ゲルソン療法)。余命数か月の宣告を受け最初の病院では手の施しようがないと手術を断られてしまった叔母が食事療法を取り入れてガンを最終的に克服するまでの闘病を間近で体感。自身も高校生の時に良性の脳腫瘍を発病。30代後半でステージ3の膵臓がん宣告を受け、がん体質の改善のため、食事療法を実践・研究の日々。
癌と食事との関係はどの程度あるのか?
たばこと癌に因果関係があることを発見した世界的に著名な疫学者Sir Richard Dole博士は、癌の原因として次のような要因を指摘しています(R.Dole and R.Peto,1981)。
1位 食物 35%
2位 たばこ 30%
3位 感染症 10%
4位 性習慣 7%
5位 職業 4%
6位 アルコール 3%
7位 地理的要因 3%
8位 公害汚染 2%
これによると、癌の要因の35%は食物によるものです。 この疫学的事実は、食物に注意を向けることで癌を治したり予防したりすることができるという癌の食事療法の大きな理論的根拠になっています。
ドール博士は食事の改善により、大腸がんは90%、乳がんと膵臓癌は50%、胃がんは35%、肺がんは20%防ぐことができるとしています。
もちろん予防と治療は異なりますが、ガンが食べ物と密接にかかわっているということは言えるでしょう。
なぜ、野菜と果物の大量摂取は、癌によいのか?
管理人あらふおは、日本の医師が執筆した食糧療法の書籍に書かれた内容を、米国対がん協会の『がんになってからの食事と運動』(法研)という本で確認してから実践するというアプローチをとっています。
米国対がん協会(American Cancer Society)とは年間1000億円の予算があるアメリカの信頼できる公益法人で、そこから出されているがんのガイドブックで裏がとれれば信用ができるものと考えているからです。
基本的にはゲルソン療法をベースとして、日本の医師のなかでは済陽高穂(わたよう・たかほ)先生の一連の著作を読み実践しています。
ご自身でご確認をいただくと明白ですが、済陽先生の提唱されている食事療法は、この米国対がん協会のガイドブックに反するようなことは一切書かれていないため極めて信頼性が高いと思っています。済陽先生の主張は、医学的な根拠のない独善的な主張ではないと考えられるからです。
後述のゲルソン療法と済陽式食事療法は、野菜と果物のジュースによる大量摂取という点が共通しているのですが、当然のことながら患者としては、なぜ野菜と果物の摂取が癌に効くのか、という理論的背景が知りたいわけです。
これについて済陽先生は『今あるガン 3か月でここまで治せる』(三笠書房)の中で、次のように説明されています。
“野菜や果物にはガンの要因となる活性酸素を無害化する抗酸化物質や体内のミネラルバランスを整えるカリウムが豊富に含まれ、代謝異常の改善に役立ちます。”
なぜ、ジュースなのか?
これは単純に、野菜と果物の必要量を固形で食べようとすると大変だが、ジュースなら可能であるという点にあります。
米国対がん協会のガイドによると、野菜と果物を一日5盛以上食べるのが原則とあります。1盛とは、2分の1カップの調理した野菜、2分の1カップのカットした果物。4分の1カップのドライフルーツ。1個の新鮮な果物。1カップの緑の葉の生野菜、です。
この5倍の量の野菜と果物を固形で食べることができる場合は、ジュースにこだわる必要がありません。しかし1日にこれだけの量を食すのは大変ですし、他の栄養素を取れなくなってしまうので、ジュースにして飲む、というわけです。
なぜ、ミキサーではなく、「低速ジューサー」なのか?
まず、がんの食事療法としてジュースを作る場合、ミキサーではなくジューサーにするというのは定説です。
カタカナなのでどちらも同じような語感ですが、ミキサーはMixer(食物繊維ごとミックスする機会)、ジューサーはJuicer(果物や野菜から繊維を取り除き、ジュースを搾り取る機械)です。
ミキサーだと刃で繊維を含め丸ごと粉砕して食物繊維入りのジュースを飲むことになるのに対し、ジューサーだと食物繊維を除いたジュースのみを飲むことになります。
そして両者はそれぞれ一長一短であり、例えば食物繊維を多くとり便秘の解消をはかりたいのならミキサーなのですが、がんの食事療法の場合、食物繊維を取り除いた方がお腹にたまらず大量の野菜と果物を摂取できるので好都合なのです。
また、がんの食事療法の場合には、酵素や栄養素が多く残るジューサーに軍配が上がります。
次に数あるジューサーの中で何を選ぶのか?という点については「低速ジューサー」がお勧めです。
普通のジューサーは刃が高速回転するのに対し、低速ジューサーは刃が低速で回転して食材に空気の混入が少ないため食材が酸化しにくいとされています。
低速ジューサーの定番と言えば、クビンスだが・・・
さらに低速ジューサーのなかで、どのメーカがお勧めかと言えば、これはどれを選んでも基本的な性能は変わりがないのではないかと管理人あらふおは考えていますが、がんの食事療法の世界では、クビンスという韓国メーカーの製品が定番となっています。
おそらくこのメーカーが定番となったのは、いち早く低速ジューサーを売り出したからでしょう。
今は後発ですがパナソニックからも低速ジューサーは発売されていますし、お値段も若干クビンスより安いのでそれでも良いと考えています。
ただ、日本人のこれまでの多くの食事療法実践者(患者)はインターネットを見る限り圧倒的にクビンスを使ってきたようですので、定番を外さないという意味ではこちらもお勧めです。管理人あらふおも結局クビンスを使っていますが、その理由はにんじんを丸ごと投入口に入れることができるからです。以前使用していたヒューロムは、まずニンジンなどの野菜を細切りにしないといけないためかなり手間がかかります。ジュースは一日に何度も作らなければならないので(作り置きはできません)、そのひと手間の違いがとても大きいです。
ゲルソン療法に適したジューサーの徹底比較はこちら >>ゲルソン療法ジューサー比較
サプリメントについての考え方
野菜と果物の大量摂取が癌に効く理由が抗酸化物質とカリウムの摂取に重点があるとすると、その成分だけをサプリメントで補ってはなぜダメなのか?という現代人ならではの疑問がわきます。
1930年代にゲルソンが食事療法にたどり着いた時代にはサプリメントなどというものがなく栄養素を食事から摂るしか方法がなかったかもしれないが、現代ならその有効成分だけをチョイスしてサプリメントで摂取して何が悪いのか?という疑問です。ゲルソン博士の時代もゲルソン病院ではカリウムの10%溶液を処方していましたので、サプリメント類似の考え方は当時からありました。
これについて管理人あらふおは色々と調べたのですが、明確な記述を発見することはできませんでした。しかしながら、ある栄養素のみを単独で大量摂取すると、本来期待される効果が発揮されないだけでないばかりでなく、逆に癌を促進する方向に働くことすらあるので、それを嫌ってのことのようです。例えば、済陽先生の『がん再発を防ぐ「完全食」』(文春新書)には、つぎのような記述があります。
“野菜や果物ががんの発生を減らすことは確かでも、βカロチンのみを取り出してサプリメントの形で摂取することは、とくに喫煙者にはよくないことがわかった。つまり、栄養素それのみを単独で過剰摂取するのではなく、食べ物は丸ごと摂取してこそ効果がある”
米国対がん協会のサプリメントに対するスタンスは、サプリメント大国のアメリカらしく、済陽先生とは少々異なります。
米国がん協会は、抗がん剤・放射線治療中のサプリメント摂取を勧めていません。治療の効果を減殺してしまうおそれを否定できないからです。一方で、抗がん剤・放射線治療など積極的な癌治療を終えた患者については、サプリメントの摂取を否定していません。
“確実な科学的証拠がないとは言え、積極的ながん治療の時期を終え、十分な必要量の栄養素を食事で摂ることのできないがん生存者が、栄養素補給剤(サプリメント)を利用することは合理的と言えるでしょう”
“栄養素欠乏の可能性に対処するために、バランスのとれた総合ビタミン・ミネラル剤1日に1~2回飲むことは、がん患者の治療後の回復を助けるうえで、合理的で健康上からもお勧めでしょう。”
管理人あらふおも積極的がん治療の時期を終えているため、マルチミネラル・マルチビタミン剤を摂取しています。また有機野菜・無農薬野菜を使用してのジュースのほか、マルマン株式会社のカリウムバランサーというサプリメントでカリウムを保管しています。管理人あらふおには、それが合理的選択と感じられるからです。カリウムバランサーはアマゾンで買えますので探してみてください。